日本での胃がんの年間罹患数はがんの中で第3位と頻度が高いものの、転移が無い限局性のがんでは5年生存率は95%と高い水準です。しかし活発に転移し全身に拡散する遠隔転移性の強いがんでは、手術で完全に取りきることは難しく抗がん剤治療が中心であるため、5年生存率は3%と予後が非常に悪い為、新たながん治療法の開発が求められています。
胃がんの主な転移先として、高分化型腺癌(分化度が高く細胞同士の接着も強い細胞)は肝転移を、低分化腺癌や印環細胞癌(スキルス胃癌等のように低分化で細胞同士の接着が弱く散在性の細胞)は、腹膜へ播種しやすいといわれています。
我々は、β-ガラクシド糖鎖を認識する動物レクチンの1つで、特定の組織のがんで異所的に発現が亢進するガレクチン-4に着目し、各種胃癌細胞を調べたところ、低分化型胃癌細胞にガレクチン-4が高発現していることを見出しました。そこで、ガレクチン-4が胃がんの悪性化、特に腹膜播種に関与するかどうか調べ、その認識リガンド、メカニズムの解明を目指して研究を行っています。ガレクチン-4の転移や悪性化に関与するメカニズムを解明できれば、悪性度の高い転移性がんの診断・治療薬開発に役に立つものと期待されます。