公益財団法人野口研究所

研究室の紹介Laboratory

糖鎖構造表記法

CarbBankなど様々なデータベースが糖鎖分野においても開発されてきていましたが、それぞれのデータベースが独自の糖鎖構造表記や独自のIDを付与していました。従って、研究者がデータベースのデータを参照し、他のデータベースと比較検討する際に、データの同一性を判断することが困難であるという問題が存在していました。そこで、大連における国際会議において、国際的に統一した識別子を糖鎖構造に付与するシステムについて議論され、そのようなシステムを開発することが合意されました。また、本会議において野口研が全ての糖鎖を表記する新規表記法の開発を進めていることを紹介しました。 この会議により国際合意が得られたことから、糖鎖構造を登録し固有の識別子を付与するシステムの開発が本格化しました。糖鎖構造に対して固有の識別子を付与するためには、糖鎖構造の同一性を判断する方法が必要となります。ここで、我々が開発していた糖鎖構造の線形表記法(WURCS: Web3 Unique Representation of Carbohydrate Structures)が重要な役割を担いました。従来の糖鎖構造表記法は表現できる構造に制限があることに加えて、テキストで表記するためのルールにおいて、固有の文字列となるような仕組みが十分ではなく、同じ糖鎖構造でも複数の文字列で表記できることが大きな問題でした。しかし、我々の開発したWURCSは、糖鎖構造を「固有の文字列」で表現でき、文字列比較により糖鎖構造の同一性を比較することができます。これにより、糖鎖構造に固有の識別子を付与することができるようになり、国際糖鎖構造リポジトリであるGlyTouCanの開発に繋がりました。 糖鎖構造表記法WURCS(Web3.0 Unique Representation of Carbohydrate Structures)には、LODやその利用環境を構築する上で有利な以下のような特徴があります: 1. 網羅性:実験から得られる様々な構造情報に対応 2. 互換性:他の表記法との相互変換が可能 3. 可搬性:データ化が容易で、コンピュータが扱いやすい
糖鎖構造表記法WURCS
参考文献
  1. WURCS 2.0 Update To Encapsulate Ambiguous Carbohydrate Structures. Matsubara M, Aoki-Kinoshita KF, Aoki NP, Yamada I, Narimatsu H. J Chem Inf Model. 2017 Apr 24;57(4):632-637. doi: 10.1021/acs.jcim.6b00650. PMID: 28263066
  2. WURCS: the Web3 unique representation of carbohydrate structures. Tanaka K, Aoki-Kinoshita KF, Kotera M, Sawaki H, Tsuchiya S, Fujita N, Shikanai T, Kato M, Kawano S, Yamada I, Narimatsu H. J Chem Inf Model. 2014 Jun 23;54(6):1558-66. doi: 10.1021/ci400571e. PMID: 24897372
  3. GlyTouCan 1.0–The international glycan structure repository. Aoki-Kinoshita K, Agravat S, Aoki NP, Arpinar S, Cummings RD, Fujita A, Fujita N, Hart GM, Haslam SM, Kawasaki T, Matsubara M, Moreman KW, Okuda S, Pierce M, Ranzinger R, Shikanai T, Shinmachi D, Solovieva E, Suzuki Y, Tsuchiya S, Yamada I, York WS, Zaia J, Narimatsu H. Nucleic Acids Res. 2016 Jan 4;44(D1):D1237-42. doi: 10.1093/nar/gkv1041. PMID: 26476458